ガングリオン

ガングリオンとは?

手関節の背側、掌橈側、掌遠位などに多く見られる良性の軟部腫瘤で、ゼリー状の内容物を確認することで確定診断がつきます。腫瘤自体には痛みは伴わないのですが、大きさと部位により近接する神経を直接、間接的に圧迫や刺激を与えるために、痛みや、しびれ、だるさなどを訴えます。
原因は不明ですが、起こっていることは、関節や腱鞘など滑液が生産される部位から漏れ出た滑液(通常でもムチンという物質により粘り気がある液体)が細い管を形成し、圧の少なくなった部位で風船のよう膨れ上がったものです。内容物は時間の経過とともに濃縮されてゼリー状のムチンとなります。注射器で直接穿刺しゼリー状物質を吸引すると確定診断と腫瘤の減少消失も可能ですが、ほぼ確実に再発します。

ガングリオンの診断と治療法

1)ミューカスチスト

指先の関節(DIP関節と呼びます)の背側、爪の付け根より少し手背にマッチ棒の先ほどの大きさから、少しずつ大きくなり、皮膚が薄いためにゼリー状の物質が透けて見える(水ぶくれと表現されることが多い)ようになり、物に当たることで、破れてゼリー状の物質が出てくることがあります。この部位のガングリオンは、ミューカスチスト(Mucous cyst)と呼ばれ、DIP関節の変形性関節症(へバーデン結節、Heberden’s nodule)に高率に合併します。
ミューカスチストは、穿刺や自然破裂によっても再発するため、感染と皮膚欠損が大きくなるので、手術が必要です。ごく初期以外では、腫瘤と皮膚も切除する必要があります。

2)手背のガングリオン

最も頻度の多い部位で、痛みを伴わない小さな腫瘤として自覚して、大きくなってから気になって来院することが多く、部位と弾力性のある触診でほぼ診断可能です。

3)手関節部掌側のガングリオン

手首掌側の親指側(橈側)に多く、次に小指側(尺側)にも見られます。橈側では、動脈、尺側では神経の近くで圧迫されるので、痛みを訴えることが背側より多くなります。穿刺には注意が必要です。

4)腱鞘内ガングリオン、腱内ガングリオン

手掌の遠位、指の付根のやや近位(MP関節の部位)と指先から2番目の関節(PIP関節)の掌側にゴマ粒大の小さくてやや硬い腫瘤として触れ、痛みを訴えることが多い。指を曲げても動きが無いことで診断がつきます。動きがある場合は、腱鞘に引っかかり腱鞘炎として診断されて腱消切開術を行った際に腱内ガングリオンと診断されることがあります。

5)オカルトガングリオン(occult ganglion)

手背まで達しないで、手根骨レベルで留まり、手背の持続する痛みの原因となるもの、手根管症候群の原因、また手根骨掌尺側で尺骨神経麻痺の原因、肘のやや遠位で皮膚からでは触れることもなく、橈骨神経の運動麻痺(後骨間神経麻痺)が発生してから診断されるものなど、
診察で典型的な部位と触診により診断が可能ですが、MRI、エコーなどの補助診断も役立ちます。
100%確実ではないので、穿刺が可能な大きさ(小豆大以上)であれば注射器による穿刺でゼリー状物質を吸引できれば、治療と確定診断ができるので初めての診察時には勧めています。ゼリー状物質を吸引できて確定診断ができれば、再発しても安心して、痛みが出るか、大きくなり穿刺を繰り返しても摘出術を待つことができます。ゼリー状物質を吸引できなかった場合には、針先が確実に腫瘤に当たっていない可能性があるものの、他の軟部腫瘍の疑いもあるので、MRI撮影後に摘出術となります。

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