へバーデン結節

へバーデン結節とは?

へバーデン結節とは?へバーデン結節は、指の第一関節(DIP関節)の軟骨が摩耗することで、関節の変形、腫れ、屈曲などを起こす病気です。すべての指について起こり得ます。「※ブシャール結節」と同様、指の変形性関節症に分類されます。
痛みを伴い、指の曲げ伸ばしが難しくなります。ときに、水ぶくれのようなふくらみを持つ粘液嚢腫(ミューカスシスト)が第一関節付近に生じます。
この病気を発見した医師ウィリアム・へバーデン(英)にちなんで名づけられました。へバーデン結節は、特に40代以降の女性に多く発症する傾向があります。

※ブシャール結節とは、へバーデン結節と同様、指の変形性関節症に分類されます。ただ、変形、腫れ、屈曲が起こる場所は、指の第二関節(PIP関節)である点が異なります。

へバーデン結節の症状

第一関節(DIP関節)の変形、腫れ、屈曲、そして痛みを伴います。また、指を曲げ伸ばしすることが難しくなります。
稀に、水ぶくれのようなふくらみを持つ粘液嚢腫(ミューカスシスト)が指の第一関節付近に生じます。
進行すると、関節の曲がりにくさ、曲げたときに生じる痛みから、物を掴みにくくなるなど、日常生活に支障をきたすようになります。

へバーデン結節の原因

へバーデン結節の原因は、ブシャール結節と同様、未だはっきりと解明されていません。
ただ、手の使いすぎ、遺伝、更年期障害によるホルモンバランスの乱れなどとの関わりが指摘されています。へバーデン結節にかかった近親者をお持ちの方は、体質のタイプなどが似ていることも考慮して、注意しておく必要があります。

へバーデン結節の検査

へバーデン結節の検査問診、触診、レントゲン撮影などを行います。へバーデン結節と似た症状を持つ病気に関節リウマチが挙げられますが、レントゲン撮影により正確に鑑別することができます。

へバーデン結節の診断

検査で得られた情報をもとに、関節リウマチなどの症状の似通った病気との鑑別をし、診断します。

へバーデン結節の治療

へバーデン結節の治療保存療法では、局所のテーピングによって安静を保ちながら、薬物療法、アイシングなどを行います。
急性期(発症直後の時期)には、少量の関節内ステロイドの注射も有効です。
保存療法で症状が改善できない場合や、関節の変形が進み日常生活に支障をきたすような場合には、手術を検討します。
へバーデン結節の手術では、関節を固定して安静を得る関節固定術、動きの残せる人工指関節手術などを行います。

へバーデン結節の手術療法

症例1

50代前半の女性、全指に変形があるも痛みの強い示指と横にも曲がった中指の手術を希望。示指は40‐60度、中指は45‐70度の可動域。中指は人差し指側に10°以上傾く。示指は螺子、中指はワイヤーと軟鋼線により関節固定を行った。約2か月で骨癒合が完成、3か月で中指のワイヤーと鋼線を抜去した。

症例2

50代中頃の女性、全指に変形があったが、痛みの強い示指と中指の手術を希望した。
骨棘を切除し、DIP関節を伸展位でワイヤーにより固定した。ワイヤーは皮下に埋没。7週で骨癒合が完成しワイヤーを抜去。術後4か月、痛みが消失。手術創が残存するも外観に満足。

 

症例3

症例3

40代後半の女性、小指に強い変形があり、痛みも強いため、外観の改善を第1目的として手術を希望されました。40度~60度の可動域とPIP関節がやや過伸展となりスワンネック変形を呈し屈曲時にスナッピングがありました。

症例3

DIP関節は、末節骨の関節軟骨の消失と硬貨像があり、中節骨の骨頭は前後像で親指側の骨破壊で撓屈変形があり、側面では、丸みがなくなり掌側の骨棘形成で屈曲が制限されています。軟骨面を切除し撓屈を整復し、伸展位でワイヤー2本で関節固定を施行。2か月で抜釘。

症例4

症例3

50代後半の女性、左中指のみの変形と痛み、外観が気になるので早急に手術を希望された。 出来るだけ早く仕事で使用したいとの希望があり、埋め込み型の螺子で伸展位で固定した。 術直後の骨片は、術後1年のレントゲンですべて吸収され、まっすぐで痛みなく満足された。

関節固定術に関して

へバーデン結節は、指先の第1関節(DIP)の変形が進行し、可動域制限が強くなってしまうと痛みも軽快してくることが多い。症例1、3のように屈伸の可動域減少に加えて、横方向の傾き が出現すると外観の醜状が女性の悩みとなることが多い。DIP関節の関節固定術は、痛みの原因となっている関節を全く動かなくなるので痛みは100%なくなります。ほぼまっすぐとして、ゴツ ゴツと飛び出した骨棘は切除するので、外観は細くきれいになります。手術はDIP関節のしわに沿った横切開なので、術後半年までは傷の痛みと赤み(瘢痕)が残りますが、1年以内にほぼ確実に消失します。第2関節(PIP)と付け根の関節(MP)が正常に動くので、DIP関節の動きがなくなっても痛みがなくなったことによるメリットの方が大きく日常動作が改善します。手術前は40度以上曲がったまま生活を続けていたので、伸展位で慣れるのに少し時間がかかることがあります。

症例5

症例5

50代前半の女性、左示中指の変形と痛み、外観も気になるので早急に手術を希望された。DIPの関節固定術で手術準備を開始したが、動きの残せる手術法の希望があった。DIP関節の人工指関節手術の選択肢もあることを説明し、人工指関節手術を行った。環指にはミューカスチストがあった。

術後2W、抜糸後テープで保護しているが、示指、中指の変形が改善し良好な伸展、屈曲も可能となっている。使用したSwansonシリコンインプラントと術後のレントゲン写真。シリコンの弾性で良好な伸展位が得られアライメントと関節裂隙も良好。

症例5

術後の伸筋腱の縫合部の保護が必要なため、術後6Wまでは伸展位で固定する。適度の屈曲は可だが積極的な屈曲訓練は6W以降からとする。2Wで伸展は改善、へバーデンリングで伸展位保持。

人工指関節置換術に関して

へバーデン結節に対する人工指関節置換術は積極的に行われていないのが現状です。理由の第1は、指関節固定術でほとんどの場合不自由なく日常生活が可能であるからであり、第2はDIP関節への使用を目的とした人工指関節が存在しないことにあります。現状はPIP関節用に開発されたシリコン製のインプラントの小さいサイズを形態の似たDIPに使用しているですが、文献的にもこれまでに良好な報告例があります。

近年、へバーデン結節に対する治療法には、外科医のみならず、患者自身の関心も高く相談に来られる方が増加しています。へバーデン結節は女性に圧倒的に多く、痛みが強くて日常生活に不自由を感じている患者が大勢居られます。関節固定術で解決することが多いのも事実ですが、繊細な作業、音楽家など少しの動きを残すことが重要な場合があります。シリコンインプラントによる手術により痛みはなくなり変形も改善します。問題点は、耐用年数どれくらいあるかということと柔らかい素材なので側方動揺性があります。5年から10年後に再手術あるいは関節固定術に移行することになっても、選択肢としての意義は十分にあるのではないかと思います。

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